黒澤の絵のすごさ

少し前に,後輩が「パソコン作業の図版のイメージが決まらないんですけれど。どうすればいいでしょうか。」と相談に来た。そこで,僕の12色の色鉛筆を渡して,「君のイメージがどんなものか,描いてごらん。」と言った。
やはり,パッと描くことができない。そこで一緒に「こんな感じ?」と試しに描いてあげたり,消したりしながら,実際に意見を聞きながら考える。
こんな相談は大好きだけれど,やはり自分の頭の中で,一定のイメージが作れないとダメなんだと思う。
鳥山明の絵みたいに,立体をきちんと頭の中で処理できないといけないと思う。相手がプロでも,やっぱり立体感が狂っていたら「こんな感じに直してください」と描いてダメ出しをしてしまう。平面的にデフォルメして処理をするならその処理の仕方を,美術館の絵から勉強して,描けなきゃ伝わらない。
「結局アナログで表現できないことは,デジタルだろうが表現はできないんじゃない。」とエラそうに言ってしまった手前,まだまだ自分もダメだなと思って,夜にノートに書きつけている。
そんなこんな格闘している中で,これはすごいと見つけたのが,黒澤明の絵である。本を2冊手元に買っている。

黒澤明「七人の侍」創作ノート

黒澤明「七人の侍」創作ノート

やはり,イメージボード,絵コンテの空気感がすごい。立体感の処理,色彩感覚も天才的で,見ていて本当に飽きない。
また,絵コンテとシナリオ,カメラワークに関連する練り方を見てみても,相当詳細なイメージを頭に持っていないと描けない。
黒澤監督は,助監督時代に1日の撮影が終わって帰ってきてから,徹夜で布団の中で絵コンテやシナリオなどを描きまくっていたというけれど,その蓄積がわかる気がする。
ジャンルは違うし,不遜なのかもしれないけれど「これくらい出来なきゃなぁ」と思って,すごく刺激になっている。
ゆっくり少しずつやるしかない。