夜桜

夕御飯を食べに出てから、せっかくなので自転車で大回りして不忍池&上野公園へ行ってきた。花冷えとはよく言ったもので、自転車は手袋をしていなければさすがに寒い。露店のぼんぼりのほのかな明るさに、少しホッとしながら、人込みの疎らになった夜の公園を散策した。
横山大観の、「夜桜」という絵がある。
力強い松明に照らされて、夜桜が浮き上がっている絵。
桜の花一つ一つが全てこちらを向いている、とても力強い絵。
横山大観の絵画の制作方法は、その描く景色を眺めてきた後、自宅の部屋に篭って一気に描き上げるという手法だったらしい。後年はその構図を意識的に焼き付けるために、フィルムを抜いたカメラを持ち歩いていたらしいが。
大観の絵にモチーフ的な表現の絵が多いのは、この制作方法のためと思われる。(つまりは対象を頭に焼付け、モチーフ化し、印象を基に構図を再構成して日本画的平面で提示する。特殊とも言える制作方法の結果、このプロセスを行っている。)
小学校のころは、この視点、というものが全く理解できなかった。中学になってから、一人で桜とか、花火を見るようになって、なんとなく、その真っ向な視点を少しは理解できるようになった。
勿論、お花見や、花火大会*1などは家族や友人と行くのだが、実際はその際見ているのは、桜や花火、内容ではない。家族とか、友人とか、恋人とか、お酒とか…。
そういう楽しみ方もいいけれど、どうしても僕は桜を見たい。
だから、もう一度じっくり一人で見る時間を少しでも持つように心がけている。そこで、自分の感性の変化とか、分析力の変化を感じることが出来るから。それが本来だと思うし、好きだ。こんな時間が、どんどん少なくなっているのは、事実だけれど。
ひとつの枝の前で40分くらい立ち止まって眺めていたら、どうしました、と怪訝そうな声を掛けられた。別に普通のことなのに。

*1:そして高校からは映画!