雪は天からの手紙である

二日続けて、雪絡みです。
「雪は天からの手紙である」とは、中谷宇吉郎の随筆「雪」のなかで名高い一節である。この随筆の最後に、

このように見れば雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る。そしてその中の文句は結晶の形及び模様という暗号で書かれているのである。その暗号を読みとく仕事が即ち人工雪の研究であるということも出来るのである。

とある。
中谷宇吉郎という人について紹介しておこう。
下枠内はWikipediaから転載・加筆。

中谷 宇吉郎(なかや うきちろう、1900年7月4日 - 1962年4月11日)は、物理学者、随筆家。石川県加賀市出身。元北海道大学教授。

旧制小松中学(現石川県立小松高等学校)を経て1922年第四高等学校を卒業し、東京帝国大学理学部物理学科に入学。寺田寅彦に教えを受け、実験物理学を志す。卒業後は理化学研究所で寺田研究室*1の助手となった。ロンドン留学の後、1930年に北海道大学理学部助教授となる。1931年に京都帝国大学から理学博士号を得る。教授となった1932年ころから雪の結晶の研究を始め、1936年3月12日には世界初の人工雪の制作に成功した。1938年12月26日雪の人工結晶作成に成功。初めのうちは、木綿糸を使い雪の結晶を成長させようとするも、失敗。ところが、低温室に入る時に着ていた防寒具の兎の毛皮に綺麗な雪の結晶が成長しているのにヒントを得、結晶化に成功した。*2他にも凍上や着氷防止の研究など、低温科学に大きな業績を残した。1949年には科学映画制作のための中谷研究室プロダクションを設立、これは岩波映画製作所の前身となる。北海道大学の低温科学研究所は、中谷宇吉郎の流れを汲む。

自身の研究を含め、科学を一般の人々に分りやすく伝える方法としても随筆をよくした。著書には『冬の華』『立春の卵』など。「雪は天から送られた手紙である」という言葉を残した事も知られる。

 雪は、どのようにして出来るか、簡単に説明すると、上空の水蒸気が冷やされて水滴ができ、気温が0℃以下なら同時に氷結する。それが雪と呼ばれるものである。しかし、0℃で氷ができるわけではなく、塵など*3核になるもの(宇吉郎はウサギの毛を用いた)があって、さらに均一性を乱す要素(何かショック)がないと氷にならず、気温が0℃ 以下になっても、しばらくは過冷却の状態が続く。その状態から何らかの原因で突然、凝集して氷結が始まり雪になる。
 中谷宇吉郎は氷結時の温度と空気中の水蒸気量によって、出来る雪の結晶の形が変わることを発見、研究した。雪になる温度を横軸、蒸気の出来る水の温度を縦軸に目盛った図の上に、そのような結晶の形を沢山プロットしたものが有名な中谷ダイヤグラムといわれるもので、実際に降って来た雪の結晶の形をその図と見較べれば、上空の雪の結晶生成時の温度がわかるのだ。
http://www1.linkclub.or.jp/~kinoko/snowclystal/snow%20slystal%20home.html
http://www1.linkclub.or.jp/~kinoko/snowclystal/jinkouyuki%20home.html
(↑理屈抜きでキレイ!)

 地上1.5mでの気温が5℃以下だと、気象学上、雪は地上まで届くのだが、東京などで降る雪は途中で若干気温があがって表面が溶けかけ、くっつきあったり、いびつな形の結晶となっていることが多い。
 「雪は天からの手紙である」とは、ロマンチックな一節だが、その裏打ちもなかなか深い。東京や岡山には、余程の大寒波が来ない限り、そのままのメッセージが届きそうにはないが…。

雪 (岩波文庫)

雪 (岩波文庫)

更にマニアックな人には
中谷宇吉郎集〈第2巻〉雪の研究

中谷宇吉郎集〈第2巻〉雪の研究

*1:勿論寺田寅彦の研究室

*2:毛の小さな瘤状のふくらみがポイントだったそう。

*3:実際空気中を漂う宇宙塵