雪花

今日、帰りに池の上駅に電車が差し掛かった時、ちらほらと白いものが空から舞い落ちてきた。初雪だ。
雪の形容として、岡山の実家ではこういったちらほら舞う雪を「雪花が散る」と言う。
あられ雪とか、本格的に降る牡丹雪とかとは形容されるもの(雪の状態)がまた違うのである。確かに花びらと同じく雪一片という数え方をするし、先ほど挙げた「牡丹雪」といった表現から、雪を花に例えた表現と云うのは昔から行われてきたのだろう。万葉集古今和歌集新古今和歌集にもあったと思う。

我が園に 梅の花散る ひさかたの 天より雪の 流れ来るかも
                         大友旅人
雪の色を 奪ひて咲ける 梅の花 今盛りなり 見む人もがも
                         大友旅人
梅の花 枝にか散ると 見るまでに 風に乱れて、雪ぞ降り来る
                         忌部黒麻呂
以上万葉集より

霞たち 木のめもはるの 雪ふれば 花なき里も 花ぞ散りける
                         紀貫之
これは古今和歌集より

有名所としては、枕草子でお馴染みの*1

空さむみ 花にまがへて ちる雪に すこし春ある 心地こそすれ
                          清少納言 藤原公任

実際、この歌のバックボーンには白楽天の、「元九*2の東川路詩に酬和す十二首」の「南秦の雪」のなかの句、「三時 雲冷ややかに飛雪多く、二月 山寒けれども少しく春有り」があるらしい。
ごめん、新古今は割愛します。

さらに調べてみると、どうやら、雪を花に例えたのではなく、花を雪に例えたことから、このような言葉は生まれてきたらしい。また、図書館へ行って「和歌辞典」でも引いてみよう。
しかし、「雪花が散る」って使う人どれくらいいるんだろう?東京に来て余り聞かない…。

*1:…風寒く小雪散る日、殿中の清少納言のもとに、あの名高い「和漢朗詠集」の編者藤原公任から歌一首の下の句がとどけられた。「すこし春あるここちこそすれ」。これにすぐ上の句をつけて返せという。さすがの才女も窮しかけたが、身をふるわせ(わななき)ながらも見事に、「空さむみ花にまがへてちる雪に」と返した。…というお話。

*2:白居易(白楽天)の親友。本名は元稹。