本紹介
- 作者: 渡辺淳一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1990/05/18
- メディア: 文庫
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- 作者: 渡辺淳一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1990/05/18
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野口英世の伝記というのはとかく野口を英雄視する傾向にある。僕が小さい頃読んだのもほとんどがその系譜だったと思う。実際生前に発行されたものに本人自ら目を通し、「こんな面白くない人生なんてたくさんだ」と言ったとか言わないとか。確かに、明治初期においてあの逆境生活の中から、あれほどの業績を挙げるのは、確かにすごいことである。当時ノーベル賞候補にも挙がったらしいが、東洋人であったせいもあって受賞とはならなかった。当時はノーベル賞でさえも、人種の壁があった*1ためと言われている。現在では、研究結果の誤りが多い(人的要因というよりは、物的要因(光学顕微鏡でウイルスが見えるはずがない))ため、研究の評価としては、わずかに蛇毒の研究成果が残るのみである。
この本はしっかりとその野口と言う人の暗部も描写している点で、そのバランスがいいと思う。この本を読んだ後、千円札をあらためて眺めてみて、なるほど、新札にしたのは景気回復祈願も込めているのか、などと妙な深読みをしてしまった。