本紹介

二十億光年の孤独 (愛蔵版詩集シリーズ)

二十億光年の孤独 (愛蔵版詩集シリーズ)

有名すぎるだろうか。二十億光年の孤独は、一つの生理現象によって消し飛んでしまう。

「二十億光年の孤独」   谷川 俊太郎         


人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする

火星人は小さな球の上で
何をしているのか 僕は知らない
(或いはネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ

万有引力とは
ひき合う孤独の力である

宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめあう

宇宙はどんどん膨らんでいく
それ故みんなは不安である

二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした

この処女詩集(1952発行)の推薦文を書いたのは、かの三好達治である。さらに、この詩集を見て?手塚治虫が「鉄腕アトム」の主題歌の作詞を依頼*1したらしい。(なんとなくSFチックなところ、「火の鳥」に見られるようにガイア理論*2に相通ずるものを感じたのだろうか。)さらに市川崑監督の前衛的記録映画「東京オリンピック」撮影にも参加、開会式でたくさんの風船が空に舞い上がる様子を、カメラを空に向けてぐるぐる回転させながら撮った映像の部分は谷川さん撮影だったはず。
言葉のリズムの持つ力を最大限に引き出せる人だろう。(他の作品も通してみていると)
どうでもいい話だが、なぜ「二十億光年」かというと、当時は宇宙の端から端まで大体二十億光年といわれていたからである。
最近ではNescafeのCMで流れた「朝のリレー」が有名か。

*1:数年前のクイズミリオネアの1000万円問題にあった。

*2:地球を、岩石と土壌でできた不活性な球体でなく、惑星とそこに住む生物が相互に依存し、自ら適応し調節する超有機的生物として捉えるという、ジェイムス・ラブロックの理論