本紹介

銀河鉄道の夜 少年少女日本文学館 (10)

銀河鉄道の夜 少年少女日本文学館 (10)

定番といえば定番。ただ童話の中で、大人になってもよい意味で意味が完全に分からない(さまざまな解釈が可能である)、しかも何故か読み直したいと思ってしまうもの。やはり僕が理系だからか。
僕自身は宮沢賢治の作品は、テーマの普遍性もさることながら、文系的な民俗学的リズム(土臭さ)と理系的とも言うべき素材との融合という独自な点において、評価できると思う。抽象的イメージを表現することにおいて、リズム、感覚で語ることはたやすいが、”物質”で(擬人化というフィルターも用いてはいるが)で語ろうとしているところが独特で、難しい。これが全体的に硬いイメージを与えるかもしれないが、逆に読者、大人までも「考えさせる」ことで、物語の場面のイメージ化を促すという効果を生んでいるのではとも思う。
理系と文系の融合に成功している唯一の童話作家だろう。
彼曰く、「わたくしという現象は 仮定された有機交流電灯の ひとつの青い照明です…」(「春と修羅」より)